絵描き美容師の妄想ぶろぐ

ちょっとおかしなせかい。

あまのじゃくがきこえない 1

 

 

ぼくの名前はあまのじゃく

みんなと同じように生きれない


まほうのことば
「みんなやってるからやって」
「みんなこうやってやってきたんだから」
が怖くてたまらない
それを聞くとやりたくなくなってしまう
みんながやってると、やりたくなくなってしまう
同じことやってると、やりたくなくなってしまう
ほんとはやったほうがいいのだろうと思うことも
「みんな」がやってるとやりたくなくなってしまう

いっぱいいればいるほど
やりたくなくなってしまう
なぜだかわからない
なぜだかわからないけど、興味がなくなってしまうんだ
みんなが集まってると外れたくなるんだ
「みんな」が向かってる方向と逆を向いてしまうんだ


走っていると止まりたくなる
止まっていると走りたくなる
そんなとき、みんなはぼくの名前を呼ぶ

 

「あまのじゃく」

 

みんなとちがうことをしたとき、みんながやらないことをやったとき、向いてる方向と逆をいったとき
決まってみんなはぼくの名前を呼ぶ

 

「あまのじゃく」

 

最初はぼくがみんなと違うから、

仲間から外れようとするから、呼んでいるのかと思った
こっちへおいでって呼んでいるのかと思った

 

「あまのじゃく!」

 

しかし、振り向いた先のみんなの目は
びっくりするくらい冷たかった
ああ、ぼくは呼ばれてなんかいなかった
突き放すような冷たい目

 

それから僕は
名前を呼ばれて振り向くことが怖くなった

 

「あまのじゃく」
「あまのじゃく」
「あまのじゃく!」
「あまのじゃく!」

 

振り向いた先の目を知っている
ぼくはもう見ない
見れない

どこへ行っても、ぼくが、ぼくの気持ちに従って行動すると
きまって名前を呼ばれる

 

「あまのじゃく」

 

そして決まってあの、冷たい目

ぼくはいつしか自分の名前が嫌いになった
名前を呼ばれると辛くなった
ぼくのことも嫌いになった
ぼくは、ぼくのすべてを否定した

 

「もう誰もぼくの名前を呼ばないで……」

 


それから僕は誰にも会わなくなった
誰にも会わなければ名前を呼ばれることも
冷たい目で見られることもない

こんな僕が、僕も嫌いだ

 

「ぼくはあまのじゃくになんか生まれてきたくなかった」


ぼくの名前はあまのじゃく
みんなと同じように生きれない


ひとりになれば
もう誰からも名前を呼ばれなくていい

ぼくは孤独を選んだ

ぼくはぼくを捨てたんだーーー。

 

 

 

 

 

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「トントン、トントントン」

 

誰かがノックした

 


「トントントン、あまのじゃくさん」

 

「………えっ…?」


一度も聞いたことがない、優しい声で
誰かが僕の名前を呼んだーーー。

 

 

 つづく

 

 

 

 

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